【おすすめ】単純な高配当株式投資がシーゲル流ではない理由
今日は一部投資家の間で話題の、ジェレミー・シーゲル著『株式投資の未来』(以下赤本)について簡単に私見を述べます。
- 作者: ジェレミー・シーゲル,瑞穂のりこ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/11/23
- メディア: 単行本
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赤本はメディアでも取り上げられたことで巷でも話題になり、高配当投資家にとってバイブルとも言える存在となっています。実際、私も赤本に衝撃を受け一発でその投資法の虜になりました。長期投資に興味を持っている方は必読です。
特に赤本が多くの人に影響を与えた理由は、
一部の高配当銘柄の長期トータルリターンはインデックスを上回る
という結論を導いたことでしょう。以下ではそのカラクリを簡単にまとめます。
ちなみに、単に高配当な銘柄に投資をするだけではダメです。その意味は以下の私の記事を読めば明らかになります。
シーゲル流投資のポイント
- 成長の罠
- 長期にわたって稼ぐ銘柄こそS&Pを打ちまかす
成長の罠とは
その時代毎に誰もが伸びると期待する企業やセクター、国というのは存在します。今ならAmazon、Google、AI、ゲノム、中国、インドなどなど。そして実際にこれらの時価総額はライバルと比較して圧倒的に大きな成長を実現しています。
そのため投資家がそれらに投資をすれば大きなリターンを挙げられると期待するのは自然な流れです。
しかし真実は違うのです。
歴史的に見て、その時々の華々しい成長分野に投資する戦略は、実は、誰も見向きもしない退屈な生活必需品銘柄やエネルギー銘柄などに投資する戦略に長期リターンでは敗北しているのです。
なぜでしょうか。それは誰もが期待する成長分野というのは皆の期待の高さだけすでに割高になっているからなのです。株式で言えばPERが高すぎるのです。
ここで株式リターンについて投資家が理解しておくべき原則を以下で赤本から引用しておきます。
投資家リターンの基本原則によると、株主の手にするリターンは、企業の実際の増益率と、投資家の期待するそれとの格差で決まる。
つまり株式リターンを得るためには企業が成長するだけでは不十分なのです。企業の成長が投資家の期待を上回る必要があるのです。
これを前提にすると、皆が成長を信じて疑わない企業への投資でリターンを手にすることがいかに難しいことかがよくわかると思います。
長期にわたって稼ぐ銘柄がS&Pを上回る? 〜①インデックスの弱点〜
次に2点目です。投資の世界においてアクティブ戦略がインデックスのリターンを長期にわたってアウトパフォームすることは非常に困難(あるいは不可能)であることはもはや常識となっています。
しかしインデックスにも弱点があります。
通常、株式インデックスではその対象銘柄の入れ替えが行われます。それまで世間で注目されていなかった銘柄であっても、その後成長産業となり時価総額が一定の規模になってくれば株式インデックスに組み入れが行われます。
AmazonやNetflixだって上場当初からS&P500に組み入れられていたわけではないのです。
ここまで読んでピンと来た方もいるかもしれません。そう、「成長の罠」です。
インデックスに投資をするということはインデックスを構成している銘柄にその配分比だけ間接的に投資することと同じです。つまりインデックス投資は構造的に成長分野への投資を後追いで行なうことになるのです。
インデックス投資は「成長の罠」から逃れることはできないのです。
長期にわたって稼ぐ銘柄がS&Pを上回る? 〜②具体的な銘柄〜
次に生活必需品セクターの代表企業フィリップ・モリス(PM)を考えてみましょう。ちなみにPMはマルボーロブランドで有名な米国の老舗たばこ企業です。
赤本ではPMの長期の配当再投資トータルリターンはS&Pに対して大幅にアウトパフォームしていることが紹介されています。この事実が多くの投資家に衝撃を与えました。
たばこ産業というのは基本的に設備投資費用があまりかからない割に継続して安定的な収益を稼ぐことができる構造をしています。そのため成長性の乏しいたばこ会社は稼いだ収益の大部分を配当金によって株主に直接還元する方法を取ってきました。
さらに過去には健康被害による訴訟問題が意識され非常に割安な水準で放置されている時期がありました。
このためPMの配当金をコツコツ再投資しながらバイ&ホールドし続けた長期投資家は複利効果を最大限に享受し、結果的にS&Pを大幅に上回るリターンを得ることができたのです。
ポイントは割安な水準での配当再投資です。
ここが重要です。PMは成長性はないものの十分な収益を安定的に稼ぎ続けました。そして投資家は収益を配当金として受け取り、配当金をさらにPMに割安な水準で再投資し複利効果を得る、このサイクルが「成長の罠」にはまっているS&Pをアウトパフォームするカラクリなのです。
赤本ではS&Pをアウトパフォームした銘柄についてPM以外にもP&Gやコカコーラ、エクソンモービルなどが紹介されています。
長期投資家は必読
赤本ではこの高配当投資以外にも色々と面白い分析結果が説明されていました。
「成長の罠」に関連して新興国投資においては中国株におけるリターンについても言及されています。
この辺りはまた今度記事にして紹介したいと思います。
- 作者: ジェレミー・シーゲル,瑞穂のりこ
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